損害保険とは
偶然の事故によって生じる損害、または傷害疾病によって生じる損害をてん補する保険契約。
損害保険契約の主たる目的は、「損害のてん補」
保険は損害のすべてをカバーするものではない
・保険事故招致⇒モラルハザードの抑止
例)自動車保険(車両保険)の小損害不担保条項(5万円以下免責)
【被保険者】:保険金受取人 (生保と異なる)
◆意義
・被保険者が保険の目的物について有する経済上の利益(無事であった場合の利益)
・損害保険の成立要件(利益なければ保険なし)
◆要件
・金銭に見積ることができる利益。(精神的利益は含まれない)
◆被保険利益の種類
1)積極利益・・・保険の目的物を所有していることによる利益
2)消極利益・・・賠償責任等により失うことになあった元来存在した利益
◆権利が複雑な場合の被保険利益
1)不動産の二重譲渡・・・1件の家を2人の買主に同時に売る。
登記しなくてもそれぞれが火災保険等の被保険利益を有する
一方が登記すると他方は被保険利益を失う。
2)譲渡担保と被保険利益・・・不動産購入者と担保権者の銀行
それぞれが火災保険を締結できるか?
双方が被保険利益を有するので締結できる。
3)自動車ローン・・・ディーラーに所有権が留保されている。
この場合、どちらに被保険利益があるか裁判所で判断が分かれている。
【利得禁止原則】:被保険者が被った損害額を超えない範囲で保険給付を受けることができる
◆損害てん補の性質
〇絶対説
実損害を埋め合わせることを本質とする。被保険利益は絶対的要件とする見解。
〇相対説
賭博化の抑制手段として損害てん補性を要求しているに過ぎないとする見解。
公序良俗に反しない限り、実損を超えて保険金を支払うことを認めている。
〇修正絶対説
損害てん補は、不確定損害の救済も含むとする見解。
損害てん補原則を拡張。利得防止措置が必要
◆利得禁止原則
・被保険利益がなければ保険契約は無効(保険が賭博化しないように)
・利得禁止のため、被保険利益を限度に保険給付が行われる。
〇従来の見解・・・絶対的強行規定であり、被保険利益を超える保険給付は禁止。
〇最近の見解
広義・・・著しい利得をもたらす保険給付は禁止
狭義・・・実損てん補原則
◆意義
保険事故発生に際して、給付される最高限度額
◆機能
保険金額が保険の目的物の価額を超えて約定された場合、超過分は取消すことができる(保険9)
◆意義
被保険利益の評価額(保険3)
◆評価基準
保険価額 = 被保険利益の評価額
一般的客観的基準によって評価(賭博転用防止)
◆評価時期
原則 : 保険事故 発生時・発生地
例外 : 船舶保険:締結時価額、 積荷保険:船積地
保険金額と保険価額の関係から、以下のように分けれらます。
【全部保険】:保険金額=保険価額
【一部保険】:保険金額<保険価額
【超過保険】:保険金額>保険価額
「一部保険」の場合、支払われる保険金は、保険金額と保険価額の割合により決まる。
これを比例てん補という。(保険19)任意規定につき、実損てん補する合意は有効
一部保険の保険金 = 損害額 × 保険金額/保険価額
一部保険の保険金 =(損害額-免責金額)× 保険金額/保険価額 免責が設定ありの場合
一部保険の保険金 = 損害額 × 保険金額/保険価額×80% 80%のco-insurance clause
【評価済保険】:あらかじめ保険価額が協定されている保険。
車両保険の車両価額協定保険特約は、締結時における被保険自動車の
市場販売価格相当額を保険期間中の車両保険金額として協定する。
保険期間中の経年減価に関わらず、全損の場合は保険金額全額を、
分損の場合は保険金額を限度に保険金を給付する。
◆意義
再調達価格を保険価額とする保険
目的物が住宅・自動車の場合、損害てん補しか受けれらないと同様の物件を再調達することは困難。
例)火災保険の新価保険特約
15年前に2500万円で家を建てた。 火災保険契約している。消失する。
時価800万円だが、再築すると3000万円 ←再調達価格
例)自動車保険の車両新価保険特約
保険期間の末日が初度登録から37か月以内の自動車が、盗難以外の事故により
全損または修理費が車両価格の50%以上となった場合
利得防止のため使途を限定する
◆意義
保険金額>保険価額
・インフレ等を考慮したニーズあり
・実損てん補しか受けられない
・契約者は超過部分を取り消すことができる(約定保険価額があるときは取消不可)
◆要件
・未評価保険であること
・契被が善意・無重過失であること
◆意義
同一の「目的物、被保険者、被保険利益、保険事故、保険期間」に
複数の契約を締結した際に保険金額の合計が保険価額を超える場合を
重複保険という。
支払保険金額の調整方法の定め(保険20)
他社保険契約の通知義務 ⇒ モラルハザード防止