労働法 → 労働条件の決定と変更

労働条件 ⇒ 労働契約

 

労働契約の特徴 : 

≪集団性≫ 大勢の労働者が集まって業務を遂行するので、統一的・画一的ルールである

≪継続性≫ 長期雇用慣行のため労働条件変更の必要性あり

 

労働契約、就業規則、労働協約の法的効力の順位

  個別労働契約 就業規則 労働協約

            ↑      ↑労使が合意したものなのでこちらが最優先

            ↑使用者が一方的に定めたもの

 

≪労働契約≫ 個別の労働者と使用者との契約。労使両者の合意⇒当事者を拘束

≪就業規則≫ 労働条件や服務規律などを使用者が一方的に定める規則集。

       合理的な労働条件である限り、個別に同意を得たかを問わず当然に適用を受ける

≪労働協約≫ 労働組合と使用者との契約。労使両者の合意

 

労働契約⇒労働時間8.0時間 無効

就業規則⇒労働時間7.5時間 有効

 

 

労働条件の変更

労働者に不利益な労働条件を一方的に課すことは原則許されない(=例外を許容する)

合理的である場合、個別的合意がなくとも拘束力を有する。(統一的・画一的ルールであるため)

 

労働契約の変更

【労働契約法8条】:労働者及び使用者は、合意により労働条件を変更することができる。

  

就業規則の変更

使用者の一方的な変更 ⇒原則:不利益変更✖  例外:合理性+周知⇒〇

 

【労働契約法9条】:使用者は、労働者と合意することなく労働者の不利益となる就業規則変更をすることはできない。ただし次条の場合はこの限りではない。

 ⇔同意書への署名等で合意があっても自由意志に基づいているかは慎重に判断される。

 

【労働契約法10条】:周知させ、変更後の内容が合理的なものであるときは、就業規則を変更できる。

 

合理性の判断

   変更の必要性 ⇔ 労働者の被る不利益

・このバランスから比較衡量される

・賃金や退職金の変更は高度な必要性が求められる

・代償措置、経過措置が取られているか。

 

何をもって周知とするか

 現実に知っているか、知りうる状況にあれば足りる

労基法106条の周知↓であることを要さない。

・常時、作業所の見やすい場所での掲示・備え付け

・書面による交付

・電子的に常時確認できる機器の設置

 

 

労働協約の変更

労働組合と使用者で利益調整 ⇒原則〇 例外:協約自治の限界⇒✖

 

協約自治の限界

  1. 既に個人の権利として具体化しているものの引き下げ(労組の範疇外)
  2. 公正な意見集約・調整の図られていない協約 ⇒無効
  3. 全体としては有利だが、一部労働者に不利益となる協約 ⇒否定することはできない

 

<まとめ>

  就業規則 労働協約

原則

就業規則の作成や変更によって、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課すことは原則として許されない

不利益変更であっても、それを理由に直ちに効力が否定されるわけではない

 

例外  変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ労働者の受ける不利益の程度、労働条件変更の必要性、変更内容の相当性、労働組合との交渉の状況その他の事情に照らして合理的であるときは、効力を生ずる。

変更が労働組合の目的を逸脱している場合や労働組合内部の討議など、労働者の意思が労使交渉に反映されていない場合(手続的瑕疵)、規範的効力は及ばない。

 

個別的労働契約 の変更と解約

新契約締結の申込に応じない労働者を解雇することができる条件(スカンジナビア航空事件)

  1. 労働条件の変更 ⇒ 会社業務運営にとって必要不可欠
  2. 労働条件の変更の必要性 > 労働者が受ける不利益
  3. 労働条件の変更を伴う新契約締結の申込が、それに応じない場合の解雇を正当化するに足りるやむを得ない場合
  4. 解雇回避努力が十分に尽くされている

 

≪変更解約告知≫:労働契約変更の申込に合意しないことによる解雇

 

意義をとどめて承諾した場合、それを理由に解雇はできない。

⇒意義をとどめた労働条件の変更については、合理性審査を行う。