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集団的労働関係法

これまでのテーマ ⇒ 個別的労働関係法

 

 

労働基準法や最低賃金法などによって、最低基準が確保されている。 が

最低基準を上回る労働条件の確保は、労使に委ねられている。

しかし労使は交渉力において非対等 ⇒ 集団的労働関係法の必要性

 

 

対等性の確保  憲法28条 労働基本権(団結権)⇒ 労働組合法

 

労働基本権

【憲法第28条】

勤労者の団結する権利および団体交渉そのたの団体行動をする権利は、これを保障する。

 

<労働基本権(労働三権)>

  • 団結権    労働条件の維持向上を目的に団体を結成し運営する権利
  • 団体交渉権  代表者を通じて使用者と交渉する権利
  • 団体行動権  ストライキ等の争議行為、ビラ配布等の団体行動をなす権利

 

労働者の団交申入れに 使用者が応じない場合は、 

労働委員会 が 救済命令(団交応諾命令)

 

 

労働基本権の保障の法的効果

正当な活動に対する刑事・民事免責

正当な活動である限り、刑事的・民事的に責任を免れる。

 

例)正当なストライキ

  • 一般的には威力業務妨害罪(刑法234条)に問われる行為
      ⇒正当な場合は違法性阻却
  • 一般的には債務不履行(民法415条)による損害賠償請求もされ得る
      ⇒正当な場合は違法性阻却

団体行動の正当性

争議行為の正当性は、下記のような側面から判断される。

  • 主体:主体になりうるものによる行為か
  • 目的:団体交渉の目的事項のために遂行された行為か
  • 開始時期/手続き:団体交渉、予告を経た行為か、平和条項違反はないか
  • 手段/態様:破壊や棄損・暴力行為は☓

 

 

 

労働基本権の制限

労働基本権に対する制限は、違憲or違法だが無制限ではない。

 

 

公共の福祉による制限

 

争議行為の制限

  ⇒人命や身体の安全を保持する安全保持施設の停廃の禁止

 

   (他の国民の命・安全のために必要)

 

【労働関係調整法36条】:工場・事業場における安全保持の施設の正常な維持または運行を停廃し、またはこれを妨げる行為は、争議行為としてでもこれをなすことはできない。

 

公益事業の争議行動の予告

公益事業は国民生活への影響が大きいため、争議行為には予告することを課すという最小限の制約を許容している。

 

<公益事業とは> 労働関係調整法8条より

  1. 運輸事業
  2. 郵便、信書便または電気通信の事業
  3. 水道、電気またはガスの供給の事業

 

 

【労働関係調整法37条】:公益事業に関する事件につき関係当事者が争議行為をするには、少なくとも10日前までに、労働委員会および厚生労働大臣または都道府県知事にその旨を通知しなければならない。

 

 

公務員に対する制限

  1. 団結権の制限
  2. 団体交渉権の制限
  3. 争議権の否認(全面的一律的禁止は争いあり)

 

労働組合の加入をめぐる問題

【労働組合法5条2項4号】:人種、宗教、性別、門地、身分により組合員資格を奪われず

 

 

労働組合からの脱退

組合脱退に関する規制の妥当性

加入も脱退も自由であるべきだが、組合大会の承認などの手続きを求めることは問題なし。

 

ユニオンショップ協定の適法性

ユニオンショップ:使用者が労働組合との協定に基づき、組合員でない者を解雇する義務を負う制度

 

労働組合からの脱退or除名 ⇒ 解雇

労働組合は、組合員を維持し、組織力を強化できる

 

組合員であることの強制

団結の事由、脱退の自由への制約? 違法か?

 

【労働組合法7条1号】:労働組合に加入しないことや脱退することを雇用条件とすることは禁止。

「組合員であることを雇用条件とすること」については、言及していない。

 

<判例・通説>

・ユニオンショップ協定の目的 ⇒ 労働組合の組織力の維持拡大

・憲法28条の団結権 ⇒ 「団結しない自由」は含まれていない

ゆえに ユニオンショップ協定は、適法で有効

 

<判例~日本鋼管鶴見製作所事件~>

ユニオンショップ協定によって、労働者に対し、解雇の威嚇の下に特定の労働組合への加入を強制することは、労働者の組合選択の自由および他の労働組合の団結権を侵害する場合には許されない。

 

<判例~東芝事件~>

労働組合は組合員に対する統制権を法律上認められ、組合員は組合の活動に加わり、組合費を納付する義務を免れないが、それは組合からの脱退の自由を前提として初めて容認されるもの。

脱退の自由を阻害する場合は、公序良俗に反し無効

 

 

労働組合の統制権

労働組合は、憲法28条の効果として統制権を有する

統制の範囲は、当該統制を下記に照らして判断される。

  • 目的を達成するのに必要か
  • 合理的範囲のものか
    (均衡、組合員の権利を侵害してないか、
     行為に対して重い処分になっていないか)

 

不当労働行為の意義

労働三権(団結権、団体交渉権、団体行動権)を具体的に保護、助成する必要がある。

 

禁止される不当労働行為

  1. 不利益取扱
     従業員の地位や剥奪・否定、
     人事上、経済的待遇、精神上、組合活動上の不利益取扱 
  2. 黄犬契約(こうけんけいやく)
     雇用条件として労働組合に加入しないこと、または脱退を求めること
  3. 団体交渉拒絶
     使用者は、労働組合からの団交申込を正当な理由なく拒否してはならない。
     ⇒団交応諾義務
  4. 支配介入
     使用者が労働組合の結成や運営について、主導的な立場に立つ、
     あるいは影響力を及ぼすこと。
  5. 経費援助
     労働組合の自主性を維持するため、経費援助をする使用者は不当労働行為。
     <経費援助にあたらないもの>
     ・時間内に団体交渉を行う場合の賃金保障
     ・福利厚生資金の寄付
     ・最小限の広さの組合事務所の供与
  6. 報復的不利益取扱
     1~5の不当労働行為があり、その救済または再審査を申し立てをしたこと、
     不当労働行為の調査、審問や労働争議の調整の場合に証拠を提出、発言したこと
     を理由とする解雇、その他不利益取扱。

 

使用者の言論と支配介入の判断

<判例>⇒組合の自主性が損なわれるおそれがあるかという観点から判断

 

 

不当労働行為の救済手続き

労働者/労働組合

 ⇓ 申立

労働委員会(都道府県) ⇒再審査⇒ 労働委員会(中央)

 ⇓ 不服(行政訴訟)         ⇓ 不服(行政訴訟)

地裁

 ⇓

高裁

 ⇓

最高裁

 

 

労働委員会による救済の特徴

  • 現状回復(不当労働行為がなかった状態に戻す)を基本
  • 救済内容は、労働委員会の裁量に委ねられている(⇔裁判)

 

<救済命令の例>

  • 団体交渉拒否 ⇒ 団交応諾命令
  • 支配介入 ⇒ 当該行為の禁止、謝罪文掲載
  • 不利益取扱にあたる解雇 ⇒ 現職復帰、解雇以降の賃金相当額の支払い