労働法 → 懲戒

懲戒処分とは

従業員の企業秩序違反行為に対する制裁罰。労働関係上の不利益措置。

 

使用者の懲戒を行う権利を懲戒権という。  

 

懲戒権の根拠

<学説>

  • 固有権説   企業の秩序を維持することは不可欠でその権利を有する。
  • 契約説    労働者が同意した範囲において懲戒できる。

<判例>

 使用者は、企業の存立と事業の円滑な運営のため、企業秩序を維持する権限を有し、

 労働者は、企業秩序遵守義務を負う。(固有権説)

 

<判例>

 就業規則等に懲戒の事由、種類、処分の内容を明記し、その定めるところに従い懲戒処分をなしうる

 

<判例>

 拘束力を生ずるためには、労働者に周知させる手続きが取られていることを要する。 

 

懲戒権の限界

  • 権利の濫用や公序良俗に反するような懲戒権の行使は、違法・無効。
  • 使用者は、規則で定めるところに従い懲戒処分をなしうる(限定列挙

【労働契約法15条】:客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は無効とする。

 

 

懲戒処分の種類

  • 戒告・譴責:注意する。始末書を提出する。人事査定に影響(昇格、一時金)
  • 減給:【労働基準法91条】:1事案において平均賃金の0.5日分まで、
                 かつ総額が一賃金支払期に賃金の10%まで
  • 出勤停止:労働契約を維持しながら出勤停止。
         ノーワークノーペイ原則により無賃金。勤続年数にもカウントされない。
         期間は法の定めはないが1日~2週間程度が一般的で、著しく長い場合は、
         公序良俗に反すると判断される。
  • 降格:
  • 諭旨退職(諭旨解雇):退職届または辞表の提出を勧告し即時退職を求め、それがない場合は懲戒処分とするもの。
  • 懲戒解雇:即時解雇  退職金は賃金の後払いの性質があるため全額不支給はあまり認められない

 

懲戒事由

  • 経歴詐称(判例:企業秩序の維持に関わる重要な事項の場合、懲戒を行うことができる)
  • 業務命令違反
  • 職場規律違反(ビラ配布、ハラスメント)
  • 無断欠勤
  • 会社物品の私用
  • 私生活上の非行
  • 二重就職・兼業(許可を得ればOK)

 

懲戒処分の有効性の要件

  1. 懲戒規程の根拠規定・・・就業規則等に懲戒の種類および事由を定めておくこと
                周知させる手続きが取られていること
  2. 懲戒事由への該当性・・・当該行為の性質や態様に照らして、
                問題となる事実が客観的に存在すること
  3. 相当性・・・社会通念上相当であると認められること
          (行為と処分のバランス)

 

懲戒処分の原則

  • 罪刑法定主義・・・あらかじめ就業規則等で定めておかなくてはならない
  • 不遡及の原則・・・規定を定める以前の行為に対して懲戒を行うことはできない
  • 一事不再理の原則・・・一度懲戒処分が確定した事案について再度懲戒処分は行えない
  • 相当性の原則・・・処分対象行為と処分内容が均衡のとれたものでなくてはならない
  • 平等取扱いの原則・・・同種の行為には、同程度の処分を科すべき
  • 適正手続きの原則・・・就業規則等で定められた懲戒手続に則っていること