1⃣資本と労働を用いて、生産技術に基づいて生産物が生み出される
2⃣生産物は、消費と貯蓄に分けられる
3⃣貯蓄は投資となり、資本の一部となる。もともとある資本は減耗していく。
4⃣労働量は、人口増加によって増加する
5⃣生産技術は、技術進歩によって向上する
「資本の貯蓄」「労働量の増加」「生産技術の向上」によって
生産量が時間を通じて増大していく = 経済成長
経済成長モデルでは、生産量は総供給によって決まる
グラフの囲った部分を数式化する。
➀生産関数
➁消費と貯蓄の配分
➂資本の蓄積
➃技術進歩・人口成長
生産要素:資本ストック(K) と 労働(L)
生産関数 Y = F(K,L)
総生産(Y)は、資本ストック(K)の増加関数であり、労働(L)の増加関数でもある。
【全要素生産性】:同じ量の資本ストックと労働で、どれくらいの財を生産できるか
を全要素生産性という(生産技術)
生産関数の傾きが徐々に緩やかになっていくこと。
縦軸に総生産(Y)、横軸に資本ストック(K) のグラフで右上がりで山なり。傾きは常に正
全要素生産性が向上すると、同じ資本ストック・同じ労働の水準でも
総生産が増加する。 つまり生産曲線が上にシフトする。
コブ・ダグラス型生産関数
A:全要素生産性(正の定数)
α:0と1の間を取る定数(計算を容易にするために0.5とされることがしばしばある)
その場合1/2乗なので平方根になるためコブ・ダグラス型生産関数は下記のようになる。
最も基本的な経済成長モデル
資本蓄積によって経済成長が生じる仕組みがわかる
<仮定>
・労働と全要素生産性は固定されていると考える
・政府部門や外国部門は存在しないと考える
ソロー・スワン モデルでは、貯蓄率は一定と仮定する
S:貯蓄 savings
s:貯蓄率
S = sY
政府部門と外国部門は存在しないと仮定しているので、貯蓄はすべて投資になる。
I = S
資本ストックの変化は、投資と資本減耗によって起こる
資本t
資本減耗─┤
├─投資
資本t+1
資本ストックの変化
D:資本減耗 depreciation
d:資本減耗率 (減耗の量は資本ストックの量に比例すると仮定)
ΔK = Kt+1 - Kt
ΔK = I ― D = I ― dK
※デルタは増加分という意味
ここまでの式のまとめ
生産関数 Y = F(K,L)
資本の蓄積 ΔK = I ― dK
貯蓄 S = sY
投資と貯蓄の関係 I = S
これを1つの式にまとめると
ΔK = sF(K,L) ― dK
K:資本ストック、L:労働、s:貯蓄率 d:減耗率
Lは一定なので右辺はKのみの関数
◆資本を増やす力:右辺の第1項
sF(K,L)
総貯蓄を表している
貯蓄は投資になり資本ストックになる
◆資本を減らす力:右辺の第2項
dK
資本減耗を表している
青い直線は、減耗線。 仮定として常に一定割合なので直線。
オレンジの曲線は、貯蓄線。資本の限界生産性逓減により徐々に緩やかになる曲線。
したがって2つの線は必ず交わる。交わるときの資本ストックは、K*
K* で2つの線は均衡して増えも減りもしなくなる ⇒定常状態(steady state)
定常状態に到達するまでは、 増やす力 > 減らす力 で資本ストックは増加していく。
資本が蓄積されるにしたがって、徐々に蓄積のスピードが遅くなり定常状態に収束する。
1⃣貯蓄率の上昇
貯蓄線を上方にシフトさせる。
2⃣全要素生産性(技術水準)の上昇
生産関数を上方にシフトさせるので、それに一定割合をかけた貯蓄線も上方へシフトする。
3⃣資本減耗率の低下
減耗線の傾きを緩やかにする。
<1⃣および2⃣のグラフ>
<3⃣のグラフ>
定常状態のまとめ
資本ストックが多ければ、総生産も多いので、
この3つの性質を持つ国は、他の条件が同じでも高い生産性を実現する。
重要なポイント!
資本の蓄積だけでは経済は成長し続けることはできない。
現実に観察される持続的な経済成長を説明するためには、モデルを拡張する必要がある。
生産関数
Yt = F(Kt,AtLt)
At:全要素生産性
AtLt:効率労働(労働増大型技術進歩)
仮定1:規模に関して収穫一定
資本ストックと効率労働をともにz倍すれば、生産量もz倍になる。
効率労働AtLtで生産量や資本ストックを割ることで
効率労働1単位あたりの生産性や資本ストックを算出できる。
それを小文字で表記する。
yt = Yt/AtLt(効率労働1単位あたりの生産量)
kt = Kt/AtLt(効率労働1単位あたりの資本ストック)
効率労働1単位あたりの生産関数
yt = f(kt)
生産物は消費と貯蓄に分けられる
Yt = Ct + St
全ての項をAtLtで割ることで、効率労働1単位あたりに変換したものを小文字で表記する。
ty = ct + st
仮定2:貯蓄率は一定
St = θyt
θ:貯蓄率
仮定3:人口成長率と技術進歩率は一定
(Lt+1 ― Lt)/Lt = n
(At+1 ― At)/At = gA
n:人口成長率
gA:技術進歩率
kss:定常状態の効率労働1単位当たり資本ストック
d:資本減耗
上記式より
重要なポイント
効率労働1単位あたり資本ストックは、定常状態に達すると成長しなくなるが、
労働者1人あたり資本ストックや経済全体の資本ストックは成長し続ける。
同様に
効率労働1単位あたり生産量は、定常状態に達すると成長しなくなるが、
労働者1人あたり生産量や経済全体の生産量は成長し続ける。
定常状態 到達後どうなる | 資本ストック | 生産量 |
効率労働1単位あたり (/AtLt) |
定常状態で 成長しなくなる |
定常状態で 成長しなくなる |
労働者1人あたり (/Lt) |
成長し続ける | 成長し続ける |
経済全体
|
成長し続ける | 成長し続ける |
労働者1人あたりの資本の成長率 = gA
gA:技術進歩率
効率労働1単位あたり資本ストックが定常状態に到達しても、
労働者1人あたり資本ストックは、技術進歩の率で成長し続ける。
経済全体の資本の成長率 = gA + n
n:人口成長率
効率労働1単位あたり資本ストックが定常状態に到達しても、
経済全体の資本ストックは、技術進歩率と人口成長率の和の率で成長し続ける。
ソロー・スワン モデルの含意
持続的な経済成長を実現するためには、人口成長と技術進歩が必要。
特に国民一人一人を豊かにしていく要因は、技術進歩(全要素生産性の改善)のみである。