先物為替取引は、将来行われる為替取引について、外貨・金額・相場・実行期限を予約しておくもの。
すなわち将来の取引について約定された外国為替。
リスク回避
将来行われる為替取引に関して、為替相場をあらかじめ確定して危険を回避する。
外貨建て債務がある場合、先物買い予約で金額を確定
外貨建て債権がある場合、先物売り予約で金額を確定
投機目的
将来円安ドル高を予想している場合、先物買い予約をする。
予想通りになれば、約定額でドルを買い即座に売れば利益を得られる。
予想がはずれれば、投機は失敗。
先物為替は為替リスクのヘッジや為替投機だけでなく、金利裁定取引にも利用される。
裁定取引とは、市場間の価格差や金利差を利用して売買を行い、利ざやを手にする取引。
例)商品Aが東京で5万円、埼玉で4万円の場合、埼玉で購入して東京で売却すれば
1万円の裁定利益が得られる。このことが知れ渡ると埼玉では商品Aの需要が増加し、
価格は上昇し、東京では供給が増えて価格が下落するため裁定利益はなくなる。
金利商品でも裁定取引が活発に行われている。
金利裁定取引:外国との金利の差を利用して金利差を利得する行動
例)東京金融市場の金利が1% NY金融市場の金利が6%、1ドル=100円の場合、
東京で100万円借りて、1万ドルに替えNTで1年運用した1.06万ドルを
円に替えて106万円、東京で101万円返済すれば、5万円の金利裁定利益を得られる。
1年の間に円高になると
1ドル=100円で取引を開始して、1年後に1ドル=90円になった場合、
100万円を割って赤字となる。
そうならないためにカバー付金利裁定取引
金利裁定取引を行う際に先物為替予約を行い、為替変動リスクを回避する
裁定利益が存在する以上は人がたかる
直物為替市場では、円売りドル買い ⇒ 円安ドル高を誘発
先物為替市場では、ドル売り円買い ⇒ 円高ドル安を誘発
いずれ裁定利益はなくなる
このように多くの人々が金利裁定取引を行うならば裁定利益はなくなる。
このとき2国の金利、直接為替相場、先物為替相場には一定の関係が成り立つ。
r(少数表示) :東京での調達金利
r*(少数表示):NYでの運用金利
S:直物為替相場 1ドル=S円
F:1年先物為替相場 1ドル=F円
東京での資金調達コスト=1 ×(1+r)
NYでの運用元利合計=1 × 1/S ×(1+ r*)
(F-S)/S ・・・直先スプレッド率
整理すると
r - r* =(F-S)/S ・・・カバー付金利平価式
二国間の金利差は直先スプレッド率に等しい
金利裁定取引を行う投資家が為替相場を確定するリスク回避を行うならば
カバー付金利平価が成立する。
金利差と先物為替の契約次第で裁定利益が得られるかが決まる。
金利差 > スプレッド率 ・・・外国で資金調達して国内で運用すると裁定利益を得られる
金利差 < スプレッド率 ・・・国内で資金調達して外国で運用すると裁定利益を得られる
カバーをとらずに金利裁定取引を行うケース
・新興国などで先物為替市場が存在しない
・自らの金利裁定取引の期限に合致する先物為替取引がない
・投資家がリスクを厭わない
こうしたケースが多数存在するとカバーなし金利平価が成立する
r(少数表示) :東京での調達金利
r*(少数表示):NYでの運用金利
S:直物為替相場 1ドル=S円
Se:予想直物為替相場 1ドル=Se円
(Se-S)/S :予想変化率
r - r* =(Se-S)/S ・・・カバーなし金利平価式
この式が意味するところ:二国間の金利差は為替相場の予想変化率に等しい
投資家がリスク中立的で為替相場の予想のもとに金利裁定取引を行うなら
カバーなし金利平価が成立する。
カバーなし金利平価が成立している状況から
予想直物為替相場が1ドル=100円から102円になったとしたら多くの裁定利益が発生する。
となれば参入者が増える⇒それは円売りドル買いが発生するので円安が起こる。
どこまで円安になるかと言えば、金利差=為替相場の予想変化率 となるまでである。
カバーなし金利平価理論は、これ↓を説明している。
為替相場の予想(期待)の変化は、現時点の為替相場に影響する。
1999年2月にセロ金利政策が導入されてから市場金利も超低金利が続いている。
このことは日本で資金調達し外国で運用するという金利裁定取引に利益をもたらすことになった。
円キャリートレード と呼ばれる。
日本では個人投資家が大規模にこの取引を行った。
FXとして知られる外国為替証拠金取引で、レバレッジを利かせた資金を借入れ
外貨に投資した。これはまさにカバーなし金利裁定取引である。