外国為替相場の古典理論

外国為替相場は、外貨に対する需給により決定される。

では外貨の需要と供給はどのように決定されるのか

この問題は19世紀以来の大問題である。

代表的が古典理論として、国際貸借説・為替心理説・購買力平価説がある。

 

国際貸借説

(1)基本的な考え方

1861年にゴッシェンが発表。

外国為替相場を外国為替手形の価格と考える。

外国為替市場では、債権者と債務者が互いに債権債務を交換して相殺している。

であれば交換する規模によって外国為替相場は決まる と考える。

 

為替心理説

購買力平価説

(PPP:Purchasing Power Parity)スウェーデンの経済学者カッセルによって提唱。

現在も支持される有力な理論。

 

(1)基本的な考え方

カッセルは、外国為替相場は両通貨の持つ購買力の大きさによって決定されると考える。

購買力の比率が為替相場となるという説。

 

両通貨の購買力に変化がなければ、為替相場は変化がなく続く。

 

A国通貨にインフレが発生し購買力が低下すると、

A国通貨の価値はB国通貨で計るとインフレ率分だけ下落する。

 

両通貨が共にインフレになると両国のインフレ率の比率を

インフレ前の為替相場にかけてものが新しい為替相場になる。

 

ビッグマックインデックス

世界のビッグマックの価格を調査して購買力平価を計算。

実際の為替相場と比較することで過大評価、過小評価の状況がわかる。

 

一物一価の法則 

完全競争市場であれば、同一の財は1つの価格しか成立しない。

もし同一財が地域によって価格が異なれば、裁定取引が発生し価格は調整される。

 

 

(2)購買力平価の測定

すべての商品の価格を調査することはできないため、共有の商品バスケットを作り、

その価格を比較する。

 

 P:日本の商品バスケット

 P*:アメリカの商品バスケット

 S:邦貨建て為替相場

 

P=S・P* ⇒ S=P/P*

 

絶対的購買力平価:直接商品の価格を比較して求めたもの。煩雑。

相対的購買力平価:為替相場の変化率と物価の上昇率から求める。

       基準時点では購買力平価が成立しているとする。

 

 t:基準時点

 St:基準時点の円ドル相場

 Pt:基準時点の日本の物価

 P*t:基準時点のアメリカの物価

 ρ:日本のインフレ率

 ρ*:アメリカのインフレ率

 

S=ρ-ρ* ⇒ (St+1-St)/St=ρ-ρ*

為替相場の変化率=両国のインフレ率格差

例)日本の物価が1%上昇し、アメリカの物価が5%上昇

  1%-5%=-4% ⇒ 4%円高になる

 

St+1 = St × ((Pt+1)/Pt)/((P*t+1)/P*t)

相対的購買力平価=

基準時点の為替相場 × 基準時点からの日本のインフレ率/基準時点からの米国のインフレ率

 

  

3つの物価指数による購買力平価

・コアCPI(消費者物価指数):裁定取引できない非貿易財が多いため現実との乖離が大きい

・生産者物価指数:2000年代に入って、現実の為替相場に近くなっている

・GDP輸出デフレータ:最も現実に近いが、為替相場を織り込んでいる財が含まれるため、

           統計的バイアスがかかる可能性あり。

 

 

(3)意義と限界

意義:

・インフレ率の差が為替相場を決定することを示した。

長期的な均衡相場であり、長期的な為替相場のトレンドを見るのに適している

限界:

短期では現実の相場と乖離する

基準時点の選択が問題となる。

 明確な基準はなく各国経済が安定し国際収支不均衡が小さい時点というくらい。

 1973年第3四半期あたりと考えられている。

どの物価指数を選択するかという問題。

 消費者物価指数、卸売物価指数、GDPデフレータ

・頻繁に貿易政策や輸送コストが変更される問題。

 一物一価の法則に影響し、正確な購買力平価が計算できない

・財の裁定取引のみが考慮されていて、資本移動の為替相場への影響は考慮されていない