アセット・アプローチは、短期の為替相場の変更を説明する。
資本移動が為替相場を形成すると考える。
金融資産は実物資産より移動が迅速で短期の変動を説明できる。
金融資産の交換をもたらすもの:金利差・資産価格の差
貨幣の需給関係が物価の変化をもたらすと考えるモデル。
マネーストックの変化 ⇒ 物価変動 ⇒ 購買力平価の新水準
伸縮価格マネタリー・モデル:
短期的に購買力平価が成立すると仮定するモデル。
しかし物価が常に伸縮的で短期に購買力平価が成立すると考えるのは非現実的。
硬直価格マネタリー・モデル(オーバーシューティング・モデル):
長期的にしか購買力平価は成立しないと仮定するモデル。
金融政策が変化しても財市場の物価は直ぐには反応しない。
対して貨幣市場の金利は瞬時に変動する。財市場と貨幣市場では調整速度の違いがある。
そのため為替相場は長期的均衡相場である購買力平価を一時的に飛び越し(オーバーシュート)
その後、時間を経て購買力平価の水準に回帰すると考える。
このモデルは硬直価格マネタリー・モデルと同様に、
長期では購買力平価が成立、短期ではオーバーシュートすると考えるが、
短期と長期をつなぐ回帰的期待形成をモデルに組み込んでいる。
投資家は為替相場が将来購買力平価の水準に回帰することを見込んで投資行動を行うというものだ。
購買力平価をアンカーとし、円高となっていれば人々は将来の円安を期待する。
期待インフレ率も考慮されている。
内外金融資産の完全代替性:投資家は期待収益が良ければどの通貨建てでもよしとすること。
実質金利差モデルは、内外金融資産の完全代替性を前提としている。
r = 日本の金利
r* = アメリカの金利
ε = 為替相場の予想変化率
r - r* = ε
r = r* + ε
結論:実質金利差が為替相場変動の一要因であったとしても、それだけでは説明できない。
マネタリー・モデルの前提の問題を修正したモデル。
為替相場の変動は、外貨建資産を保有するリスクにも依存すると考える。
リスク・プレミアム:危険資産と安全資産の収益率の差
投資家は危険資産に投資する際、安全資産の収益率にリスク・プレミアムを加えた収益率を要求する。
r < r*+ ε ←こうでないとドル建て資産に投資しない。
RP:リスクプレミアム
r = r* + ε - RP
ε = r - r* + RP
為替相場の予想変化率は、内外金利差にリスクプレミアムを加えた分に等しい
結論:現実の為替相場は、実質金利差とリスクプレミアムの分だけ購買力平価から乖離する
意義:
為替相場の決定要因を明らかにした。
・実質金利差モデル ⇒ 中央銀行の金融政策
・ポートフォリオバランスモデル ⇒ リスク要因、経常収支の累積
それらが説明するシナリオの例
金融緩和
↓
為替相場下落・金利低下
↓
輸出増加・投資増加
↓
国内財の需要増加
↓
物価上昇
↓
経常収支の黒字拡大
↓
対外資産が蓄積
↓
投資家のリスク認識を変え、ポートフォリオを変化させる
↓
為替相場の変動
限界:
為替相場の動きはランダムウォークではないかという考え方が登場。
ランダムに発生するニュースによって相場が動く。
ランダムウォークなのなら⇒外国為替市場は効率的といえる。
効率的市場:現在から来期にかけての情報がすべて現在の価格に反映されている市場。
裁定取引の余地がない。