第Ⅱ部 環境要因の変化と消費者行動

第4章 消費行動と消費者パターンの分析

1.生活資源配分と消費行動

分析単位としての家族と家計

家族・・・社会単位 生活主体

家計・・・経済単位 生活の仕組み

家庭・・・生活の場

 

【家族】:血縁または婚姻によって結ばれている人々の集合体。

     共住・共食・同一生計するもの

【家計】:経済システムを構成する経済主体の1つ。

 

 

生活環境・生活構造・生活意識

避けようもない[生活環境]をベースに

生活構造]と[生活意識]が互いに影響しながらインプットとなり、

生活行動]を形成し、

消費行動]⇒[購買行動]⇒[使用行動]と具現化されていく。

 

生活環境

外的な環境要因群のこと

(人口動態、経済動向、政治情勢、社会的風潮、社会制度)

生活構造

生活資源の量や内容からなる条件や制約

(収入、家族構成、居住形態、資産の保有パターン)

生活意識

価値意識で生活行動を方向付ける要因

(価値意識、生活信条、生活目標、生活設計、帰属意識、態度、動機、パーソナリティ)

生活行動

生活構造]と[生活意識]とをインプットとして行う行動

(時間、所得、空間などの生活資源の配分行動)

消費行動 生活行動のなかでも所得配分(支出配分)に関わる行動

購買行動

使用行動

製品やサービスを調達する行動

製品やサービスを消費・使用・処分・廃棄する行動 

消費様式の選択と支出配分

生活様式 時間・空間・所得といった資源をどのように配分するかの基本パターン。
消費様式 所得配分に焦点を当てた選択行動の基本パターン
消費パターン 特定の消費様式や消費行動と結びついた製品・サービスの選択の組合せ 

2.消費行動分析の3つのアプローチ

ライフサイクル・アプローチ

生命周期(出生⇒成長⇒成熟⇒老衰⇒死亡)

家族の周期は、家族ライフサイクル

 

人々はみな同じようなライフサイクルを経験し、各段階は同質的であるという前提。

しかし、価値意識は異なり、多様化している。

 

ライフスタイル・アプローチ

生活の仕方、価値意識を反映し、消費の仕方、選択する財・サービス、行動の組合せを捉える。

 

AIOアプローチ(Activities,Interests,Opinions)

活動、関心、意見という側面とデモグラフィック属性を

質問することでライフスタイルを測定しようとするもの。

 

VALS(Value & Lifestyles) 800問の質問で9つの価値類型に分類する。

LOV(List of Values) 簡単な調査で価値意識の測定する。

 

ライフコース・アプローチ

ライフイベントのタイミングや間隔に着目して分析する。

ライフコースの類型化が可能。

 

3.消費様式の選択メカニズム

時間配分の理論:家計内生産か外部化か

ベッカーの理論:

ほとんどの消費には家計内での最終加工過程が必要。

家事活動が担うこの過程を家計内生産という。

 

家事の一部はサービス購入という形で外部化できるので、

家計内生産か市場購入かを選択できる。

その消費様式は家計の時間コストに依存する。

時間コストは機会コストによって測られる。

 

消費様式の選択プロセス

外部化の進行と消費の多様化

消費パターン

1)冷凍食品、冷凍冷蔵庫、電子レンジ

2)素材の調理、調理時間、技術

 

外部化の進行と消費の多様性

消費と生産の境界

固定的なものではなく状況によって変化する。

消費様式の選択消費パターンの変化と関連付けて捉えることで

多様化等の消費構造の変化を把握することができる。

 


第5章 消費者行動の変化とその諸相

1.消費者行動の変化をどう捉えるか

消費者を取り巻く環境要因の変化

人口動態の変化

結婚 ⇒ 晩婚化 非婚化

出産 ⇒ 晩産化 少産化

 

社会規範の変化  

価値意識の変化

 

生活環境の外部要因(SEPTEmber、PEST)

P 政治的要因

制約的あるいは促進的な形で消費者行動に影響を与えるもの。

 

例えば、規制緩和(あるいは規制強化)、税制・年金制度の変更など

 

E 経済的要因 経済成長や雇用環境、好況・不況といった景気動向などの経済的要因は、家計の働き方所得水準を決定し、消費者の生活構造の側面、とくに購買能力に影響を与える。
S 社会的・文化的要因 社会全体のあり様を形成する社会的・文化的要因の変化。例えば、人口動態(人口減少や少子高齢化)、社会的関係(家族関係、地域での人間関係)、価値意識(役割意識、規範意識)の変化など。

 

T 技術的・環境的要因

制約的あるいは促進的に消費者行動に作用する要因。

情報通信技術地球環境問題資源エネルギー問題など。

 

個人化する家族、多様化する世帯

結婚行動の変化 ⇒ 晩婚化 非婚化 離婚 再婚

出生行動出産  ⇒ 晩産化 少産化 産まない

 

世帯主年齢の分散化 ⇒ 世帯の多様化

核家族、夫婦のみ世帯、単身世帯 の増加

 

雇用構造・雇用制度の多様化

働き方の違い(正規/非正規) ⇒ 所得水準の格差

働き手の違い(共働き/片働き)⇒ ダブルインカム化 家計の個計化

 

生活意識の変化

・高齢化/長寿化 ⇒ 量から質へ 生活のリスク意識

・経験価値 ⇒ モノからコトへ

・環境意識/変更意識 ⇒ LOHAS

・家族の個人化 ⇒ 自分らしさ 絆づくり

 

 

生活と消費の要式変化、個別化と外部化

生活様式

時間・空間・所得といった生活上の諸資源を、どのように配分していくかという生活行動の様式(型)であり、その基本パターンのことを指す。

消費様式 所得配分に焦点を当てた財・サービスの選択行動の様式(型)であり、その基本パターンのことを指す。

これらの変化により、消費・購買行動が変化している。

 

 

2.家事の外部化と消費の多様化

時間コストを増大させる諸要因

デモグラフィック要因

家計の規模が小さくなるほど時間コストは増大する。

晩婚化や非婚化、単身世帯の増加は、時間コストの増大に。

ライフスタイル/

社会的要因

家事労働に対する価値観の変化余暇活動への関心の高まりは、家事労働の時間コストを高める。多様化し、多忙化するライフスタイルの変化も時間コストを増大させる。
経済的要因 従来の経済環境(所得水準が継続的に上昇する)は、これまで時間コストを一貫して押し上げてきた。その背景には、教育投資の結果としての所得獲得能力の増大、女性の雇用労働者化等の流れもある。 
技術的要因

様々な技術革新は、生活を便利にすると同時に忙しくもさせている

インターネットや携帯電話の普及により、24時間追いまわされる生活状況に陥っている。 

<時間コスト変化の消費プロセスへの影響>

家事活動の外部化:消費プロセスの変容

時間節約型消費プロセスへの変容

➀ 家事活動の外部化

➁ 家事活動の売り手依存・・・消費プロセスの一部をメーカー、小売業に委ねている

➂ 家事活動の停止(一部、全部、回数)・・・アイロン不要のシャツなど

➃ 製品による家事活動の代替(家計内設備投資)・・・ルンバ

 

市場需要への影響

➀ 代行サービス・・・外食、クリーニング、託児所、買い物・送迎の代行

➁ 時間節約型機器・・・食器洗浄機、電子レンジ、フードプロセッサー

➂ 時間節約型小売機関・・・ネット通販、宅配サービス、CVS

➃ 半加工品・使い捨て製品・・・

➄ 省時間型余暇活動・・・高速手段による短時間の旅行、都心のジム

 

多様化する消費の諸相

消費者間に見られる多様性 「十人十色」

消費者内に見られる多様性 「一人十色」

 

3.インターネットが変える消費者行動

インターネットの登場とその変遷

CGM:Consumer Generated Media

ブログ、SNS、Q&Aサイト、価格比較サイト、商品評価サイトなど、

消費者自身が主体となって書き込みや投稿を行い、情報を発信し共有するサイトは、

消費者自身によってコンテンツが生成されていくメディアという意味でCGMと呼ばれる。

 

ソーシャルメディア

SNSなどのように情報発信による社会的相互作用を通じて広がっていくように設計されたメディア。

 

能動化する消費者、広がる相互作用

マスメディア ⇔相互乗り入れ⇔ インターネット

 

対人情報環境

 

消費者(能動的な受け手)

 

ネットワーク外部性:利用者増に伴う質の向上

ソーシャルメディアの普及:共有から共感やつながりへ

 

プロシューマー(アクティブコンシューマー)

消費者が生産側に入り込んでいる。

 

 

<購買意思決定プロセス>

 

新たな情報過負荷の発生

【情報過負荷】:

処理能力を超えるような大量の情報は、かえって意思決定の質を低下させる。

このような現象は情報過負荷と呼ばれる。

 

インターネット普及による問題点

・情報過負荷

・サイトに対する信ぴょう性やリスク

・選択的バイアス