第Ⅲ部 消費者情報処理の分析フレーム

第6章 情報処理のメカニズム

1.情報処理システムとしての消費者

記憶の二重貯蔵モデル

【符号化】:外部情報のインプットを内部情報として記憶表象に確立すること

【記憶表象】:外部情報に対する意識上の記憶像のこと

       環境の構成要素と捉えた場合、認知要素とも呼ばれる

【貯蔵】:作業記憶と長期記憶に情報が経時的に保持されている状態

【検索】:長期記憶や作業記憶から情報を引き出すこと

 

作業記憶

先導的に情報処理を推進し、制御する

 

◆作業記憶への符号化

感覚記憶から作業記憶に転送する情報を選別するフィルターの役割「選択的注意」と呼ばれる

 

◆作業記憶の貯蔵と長期記憶への転送

リハーサル

 維持リハーサル:反復や復唱で情報の保持と活性化

 精緻化リハーサル:認知要素間の結合による意味とイメージの鮮明化

チャンキング

 処理単位であるチャンク(情報の塊)の有効活用

 

長期記憶

大量に貯蔵されている意味的な関連性を持つ内部記憶

 

顕在記憶

自分の経験を思い出すという意識を伴った記憶

・エピソード記憶:自らの体験に基づき、いつ・どこで という

         時間的・空間的に位置づけられた出来事に関する記憶

         深い感情をも含む自伝的記憶

 

潜在記憶

自分の経験を思い出すという意識を伴わない記憶

・意味記憶:消費者が知っている一般的な知識   例)サントリーの伊右衛門

・知覚表象システム:感覚や知覚のレベル対象を同定(認識)する際に働く記憶。

          意味的な処理が行われる前に働く記憶。

          例)ロゴマークからブランドを特定

・手続記憶:言語記述では表現できない手続きや方法に関する記憶

      例)そばの打ち方

 

長期記憶への符号化

認知要素間を結びつける精緻化による連合を伴う

 

2.処理資源の限界とその克服

ヒューリスティクス

経験則を基にして情報処理を簡略化する方法(簡便法)

先入観やクセに基づく思考法(⇔アルゴリズム)

※限られた処理資源でやっていくため

 

目標階層

目標のWBS

ゴール

 ↓

下位目標(そのためには、と分解する)

 ↓

下位目標(さらにそのためには、と分解する)

 

3.消費者情報処理モデル

情報処理システムの構成要素

・問題認識プロセス (理想と現実のギャップ)

・情報取得プロセス (探索と解釈)

・情報統合プロセス (評価と選択)

 

 

分野による用語の違い

・意思決定科学  問題 ⇔ 解決策

・マーケティング ニーズ⇔ 充足策

・社会科学    目的 ⇔ 達成手段

    ※同じ意味

 

 

 

内部要因

◆動機づけ

【動機】  :問題を認識        「のどが渇いた」

【動機づけ】:問題認識に目標が付与される「のどの渇きを潤す」

【動機づけられた状態】:自発的に関与する「のどの渇きを潤したい」

 

◆能力

専門知識力

 

外部要因

 

◆外部情報

外部環境のあらゆる情報。五感を通じて入力されるすべて

 

◆コンテクスト(処理機会)

外部情報の背後にある状況や文脈

・消費者に起因するコンテクスト

 例)時間的圧力、予算的制約、社会的要因

・競争に起因するコンテクスト

 例)この棚から選ぶ、この店で決める、別の店も検討する

 

MAO視点からとらえる情報処理

Motivation(動機づけ)  内部要因

Ability  (能力)   内部要因

Opportunity(処理機会)

4.消費者情報処理とマーケティング対応

3つの処理機会

1.情報処理プロセスとしての処理機会

2.コンタクトポイントとしての処理機会

3.情報処理サイクルとしての処理機会

 

第7章 情報処理の動機付け

1.動機としての問題認識

目標

 ↕ ギャップ(問題)

現実

 

解消型動機

負の状態からの解消

1.問題除去

2.問題回避

3.不完全な満足

4.接近・回避の混合

5.通常の消耗

 

報酬型動機

正の状態への報酬

6.感覚的満足

7.知的刺激または習熟

8.社会的承認

 


動機を誘発する要因

現実の状態は、次の3つに触発されて認識することになる。

 

物理的要因

・故障 ・老朽化

消費者の欲求(動因 motive 内側から)

・生理的欲求 ・社会心理的欲求

外的刺激(誘因 incentive 外側から)

・外部情報

 

2.動機づけとしての目標と目標階層

結果志向の目的

・状態の実現やモノの獲得を目指すもの

認知的動機が支配的となる

 

プロセス志向の目標

・経験や体験というプロセスの消費を目標とするもの

感情的動機が支配的となる

 

◆目標階層

テキスト参照

 

3.動機づけられるメカニズム

手段―目的連鎖モデル

動機づけられるメカニズムを説明するモデル

上のレベルにいくほど動機づけられている

上の3つは、自己知識

下の3つは、製品知識

 

4.動機づけられた状態としての関与

関与概念

【関与】involvement:動機付けられた結果、活性化された内的状態

 

関与水準の規定要因とその源泉

関与の対象

関与の状態と情報処理

 

 

関与 = 動機づけの代理変数

 

第8章 情報処理の能力

認知構造の分類

【事実】<【概念】<【スキーマ】<【スクリプト】

 

【事実】(FACT): もっとも単純な認知構造。認知構造の基本単位。

         消費者が真実と信じているもの「AはBなり」

         A=B

 

【概念】:事実の総体。

     特定の抽象的な概念。

     例)「保険とは何か」「民主主義とは何か」

 

【スキーマ】:一括りに活性化される事実の集合。

       複数の概念を含む

       固定的や可変的な 事実や概念がある。

 

 

【スクリプト】:一連の行動に関するスキーマ。

        台本、シナリオ

        例)レストランに入る

            ↓

          テーブルに着く

            ↓

          注文する

            ↓

          料理を食べる

            ↓

          勘定をする

            ↓

          レストランを出る

 

認知的学習のプロセス

【累加】:既存の概念に新しい認知要素を結びつけること

     知識獲得の普遍的なやり方

     例)ポッキーに「つぶつぶイチゴ」を結びつける

 

【同調】:累加した個々の認知要素を効率的に解釈できるように

     1つのまとまりとすること

 

【再構造化】:対象や概念をより複雑な認識へと認知構造を変化させること

       例)クラッシュポッキーには「アーモンド」と「ピーナツ」がある。