◆経営戦略の意義
◆企業の目的
※ステークホルダー間のバランスを取りながら、付加価値を提供し、成長し続けること。
参考:Johnson & Johnsonのクレド
第1の責任:顧客に対するもの (取引先には適正な利益をあげる機会を提供しなければならない)
第2の責任:全社員に対するもの(尊厳、安心、安全、公正、清潔、家族に対する責任、提案・苦情)
第3の責任:社会に対するもの (良き市民、有益な事業、福祉、租税負担、社会の発展、教育、健康、環境保全)
第4の責任:株主に対するもの (健全な利益、革新的な企画、新しい設備、新しい製品、内部留保、そして配当)
◆リーダーシップの重要性
トップマネジメント・・・ビジョンの提示、巻き込む力、受け入れる度量
ミドルマネジメント・・・戦略代替案を考える。実行する
◆経営理念/ビジョン
企業の存在意義や使命を普遍的な形であらわした基本的価値観。 それは、、
◆戦略レベル
【経営戦略】・・・経営理念と現実のギャップを埋める方法論で、次の3つのレベルがある。
<全社戦略>
どの事業領域で、何を源泉とし、
どう配分するか
事業ポートフォリオ
経営資源の配分
<事業戦略>
具体的な事業分野を扱う。
特定市場での競争分析などの
アクションプランを策定、実施。
<機能戦略>
事業戦略を実現させるための施策を
機能別に落とし込む。
不足している経営資源や能力は、次のような方法で補うことができる。
経営のスピードや自社の能力を見極め、メリットとデメリットを考慮して外部資源の活用を検討する。
事業拡大の際に外部資源を活用する手法として、M&Aとアライアンスがある。
◆M&A(Mergers & Acquisitions)合併・買収
合併や買収ですでに確立した事業を買うことにより、自社にない人材・販売チャネル・生産設備・ブランドネームなどの経営資源を短期間に手に入れることができる。
近年、企業活動においてスピードやタイミングの重要性が増している。M&Aは時間節約の効果がある。
◆アライアンスと戦略的提携
【アライアンス】・・・複数の企業が互いに何らかのメリットを得ようと協力体制を組むこと。
M&Aよりも緩やかな統合。合弁会社を設立するケースもある。
【戦略的提携】・・・アライアンスの中でも、ある優位性を持つ企業が異なる優位性を持つ企業と
アライアンスを組むこと。「強者連合」。成功率が高くなる。
◆M&Aの展開方法
≪同一業種内≫
〔水平統合〕:競合他社を吸収合併することでスケールメリットを作る方法
規模の経済が効く業界で有効。(セメント、パルプ、石油)
〔垂直統合〕:自社がコントロールできる範囲を広げる
→川上:仕入れ先の事業に進出する(コストをコントロール)
→川下:販売先の事業に進出する(市場をコントロール)
≪異業種間≫ :経営の多角化のために行う。シナジーを得るか、リスク分散が目的。
◆M&Aの注意点
長期戦略の一手段ととらえ、経営戦略との整合性を検討する。
組織風土の適合性を検討する。合わない場合、シナジーが発揮できず、従業員は拒否反応を示す。
買収後の事業戦略を用意。買収価格は妥当か。
———— | M&A | アライアンス |
時間・資金 | 時間も資金も要す | それほど必要ではない |
法的手続き | 法的手続きが大変 | 容易 |
事後のコントロール性 |
コントロールしやすい スピーディに意思決定が可能 |
コントローしにくく、 調整コストがかかる場合もある。 意思決定に時間がかかることも |
組織文化の摩擦 | 致命的な問題となりやすい |
M&Aほどは致命的ではない |
解消 | 解消が困難 | 解消が容易(結束が弱い) |
技術ノウハウ | 外部に流出しにくい |
関係が解消されることで技術やノウハウが 流出する恐れがある |
◆事業ポートフォリオ
経営資源のバランスを取りながら、次の3つの視点で事業の選択や組合せを考える。
≪事業の魅力度≫
儲かるかどうか
市場規模、成長性、収益性
収益変動のリスク
国際化の可能性
≪競争優位性≫
勝ち目があるか
市場における地位
事情占有率
≪事業間のシナジー≫
単独よりも効果が得られるか
リソースの共有によるコストメリット
ブランド、ノウハウ、人材、
管理、販売、流通、技術、生産、
ハード&ソフト
◆事業ライフサイクル
製品や市場は、必ず誕生から衰退までの流れを持ち、その段階によって取るべき戦略は異なる。
段 階 | 売上・利益 | キャッシュフロー | 競 合 |
戦 略 |
導入期 | 低い | マイナス | ほとんどいない |
需要拡大のためPRが必要 事業化するノウハウも必要 |
成長期 | 急速に伸びる | プラス |
参入増える 差別化が必要 |
事業規模拡大に応じて マネジメントノウハウのレベルアップが必要 |
成熟期 | 低成長、利益も低下 |
プラス (投資が少ないため) |
競争激化 競争優位であるべし |
一部の企業が市場の大部分を獲得し、 下位企業は特定セグメントに資源集中する |
衰退期 |
低下、新規投資は不要 リーダーは利益がでる |
効率性の追求が必要 イノベーションで活路を見出すか撤退か |
◆成熟期/衰退期の課題
◆成熟期の戦略(ポーター)
※成熟期はキャッシュフローが潤沢になるが、衰退に向かっている場合は回収が困難なので再投資は慎重にすべき。
◆撤退戦略
日本企業が苦手な戦略。官僚的な企業風土やリーダーシップ不足が原因。
◆新規事業戦略(衰退期にあたり)
ハーバード大学のポーター教授は、3つの基本戦略があるとしている。
◆コストリーダーシップ戦略
テーマ:競合他社よりも低いコストを実現すること
高いシェアを確保した後で、規模の経済 と 経験曲線 が機能し始め、収益が得られる。
※この戦略は規模型事業では有効だが、規模拡大が収益に直結しない事業タイプでは通用しない。
◆差別化戦略
テーマ:自社製品を差別化して、業界のかなでもユニークだと思われる何かを創造すること。
※差別化することで、一部のファンは魅了できても、大衆の支持は得られない可能性がある。
※研究開発や良い材料、良いサービスが必要になるためコスト高になる。
◆集中戦略
テーマ:特定の〔顧客層、製品、市場〕など、限られた領域に資源を集中する。
※ターゲット市場と全体市場との間で、ニーズの差が小さいと集中の効果が少なくなる。
経済性をコスト面から高めるものとして主に3つのの考え方がある。
◆規模の経済
≪固定費によるもの≫
生産量が増えると変動費は比例して増えるが、
固定費は一定であるため、
単位当たりの固定費が低下する。
≪変動費によるもの≫
生産量が増えれば購入量も増えるので、
買い手として交渉力が増し、
仕入価格を低く抑えることができる。
同じことが、開発、生産、マーケティング、
営業活動などあらゆる段階で生じる。
◆経験曲線
累積の経験量が増えるほど、コストは低下するという考え方。
※このようなコスト低下を見込んで価格を低めに設定し、シェアを確保するという考え方がPPMの背景としてある。
◆範囲の経済
複数の事業活動を持つことで、より経済的な運営が可能になるという考え方。
※資源を共有することでマイナスになることもある。
例)ヤクルトレディの販売力を活かして化粧品販売。飲料の売り子から化粧品を買いたがらなかった。
戦略を策定する過程で現実を正確に把握するために環境分析を行う。主なフレームワークは下記の3つがある。
◆マクロ環境分析
自社でコントロールできない要素を検証する。
自社の事業に関係の深い要素に絞り込んで分析する(全部ではコストがかかりすぎる)
≪分析対象≫
PESTと覚える
◆3C分析
マクロ環境分析よりもさらに個別具体的な分析に用いる。
≪Customer≫ 市場(顧客)分析
自社の製品・サービスを購買する意思や能力がある潜在顧客を把握する。
≪Competitor≫ 競合分析
競争状況や競合相手を把握する。寡占度、参入障壁、競合のパフォーマンスなど
競合を知ることは自社の強み弱みを知ることになる。
≪Company≫ 自社分析
市場シェア、収益性、ブランドイメージ、技術力、組織スキル、人的資源などを分析
◆SWOT分析
SWOTを整理することにより、成功要因(KSF)や事業機会を導き出しやすくなる。
外部環境 | Oppotunities(機会) | 市場における機会を探る | |
Threats(脅威) | 自社にとっての脅威を洗い出す | ||
内部環境 | Strengths(強み) |
自社の強みを把握 |
コアコンピタンスを見極める |
Weakness(弱み) | 自社の弱みを把握 |
事業戦略を立てるポイントは、企業とその環境との関係を見ること。
業界構造を分析する際に役立つのが、ポーターの「5つの力」分析。
◆ポーターの「5つの力」分析
付加価値が事業活動のどの部分で生み出されているかを分析する方法。
◆バリューチェーンの考え方
事業活動を機能ごとに分解し、どこで付加価値が発生していているのかを分析することで
事業戦略の構築や改善に役立てる。
モノの流れに着目して、各活動にマージンを加えて、全体としての付加価値を表す。
それぞれの活動の事業戦略への貢献度を明確にすることがポイント。
◆バリューチェーンの活用
バリューチェーンで自社の優位性の源泉を探ることは、資源配分の検討や戦略決定に役立つ。
例)優位性にあまり影響がない活動は、外部資源の利用を検討。
例)どの部分でコスト削減が可能かを検討。
例)高付加価値の機能に資源集中。
例)業界構造の分析にも利用できる。決め手となる活動を把握することで業界特性や成功要因を理解できる。
(医薬品業界では研究開発、文具業界では物流体制が重要)
◆コストドライバー(ポーター)
間接費の配賦計算をできるだけ実態に合わせて正しく行う方法である。
その間接費の割り当て基準をコスト・ドライバーという。
事業分析の際にコストに注目し、コストの構造的要因を整理し、定量的に把握。
◆バリューチェーンの再構築
これまで当然とみなされていた事業の定義やルールが根本的に変わること。
IT技術のイノベーション等によって様々な業界で起きている。内部条件の変化の影響が大きい。
例)技術革新で生産コストの重要性が低下
≪バリューチェーン再構築の影響を受けるかのチェックリスト≫ (BCG)
◆新しいビジネスモデルのパターン(BCG) ≪レイヤーマスター≫
バリューチェーンの一部に特化する方法。メーカーはバリューチェーンを丸抱えしがちだが、
一部の要素で支配的な地位を確立できれば、他の付加価値部分はアライアンスを組むことで補完できる。
例)インテルは特定部品に集中して競争優位性を築いている。
≪オーケストレーター≫
独立した企業が連なる新たなバリューチェーンを構築し、全体の価値を高める方法。
例)DELL 受注生産を採用し、部品メーカーの組織化で効率的な生産体制を構築している。
≪マーケットメーカー≫
既存チャネルの弱みや欠陥を逆手にとって新市場を開拓する方法。
≪パーソナルエージェント≫
ネット上の部数の情報を整理すナビゲーターが新たな購買代理店として機能する方法。
例)楽天、出店者にノウハウを提供し、顧客に安心を提供。
業界内の競争上の地位を4つに分類する。この地位によって企業の戦略は制約を受ける。
それぞれの定石となる戦略を理解したうえで独自の戦略を検討する。
◆リーダーの戦略
No.1の地位を維持する戦略をとる。
◆チャレンジャーの戦略
No.2のシェアを持ち、リーダーに取って代わろうとする企業。
◆フォロワーの戦略
リーダーに追随し、業界から反撃を招かない方法で経営効果を最大化する。
◆ニッチャーの戦略
市場は小さいながらも特定の領域で独自の地位を築いている企業。
地位 | 課題 | 基本戦略 | 定石戦略 |
リーダー |
シェア維持 利潤最大化 名声 |
全方位型戦略 |
周辺需要拡大 同質化(他社の差別化の無力化) 非価格対応 最適市場化 |
チャレンジャー |
市場シェア |
対リーダー差別化戦略 |
上記以外の戦略 (リーダーができないこと) |
フォロワー | 生存利潤 | 模倣戦略 |
リーダー、チャレンジャーの 政策の観察と迅速な模倣 |
ニッチャー |
利潤 名声 |
集中戦略 (製品・市場特定化) |
到底市場内でミニリーダー戦略 |