2分野で構成されている。
企業に資金を提供して運用したいと思っている投資家の理論。
事業に必要な資金を金融市場から調達したいと思っている企業側の理論。
どのような手段で調達すれば企業価値を最大化できるか。
今日の1円は、明日の1円よりも価値がある。(金利・不確実性・インフレなどによって)
C = n年後に受け取るCash
r = 割引率(年利)
n = 何年後に受け取るか
倒産などのリスクに見合う期待利回りを設定する。
同程度のリスクがある投資機会で得られるであろう利回りと同じ率となる。
その資産が将来生み出すキャッシュフローの現在価値。
i = 何年目か
C = i年に受け取るCash
n = n年まで受け取る
r = 割引率(年利)
キャッシュフローには様々な種類があるが主なものを下記に挙げる。
一定額の受け取りが特定期間続くキャッシュフロー。上記Σの式はこれと同じ結果となる。
CF = 毎年の受取額
n = 受け取り期間
r = 割引率(年利)
一定額の受け取りが永久に続くキャッシュフロー。
土地などは永久年金を生み出すものとして資産価値を計算する。
CF = 毎年の受取額
r = 割引率(年利)
一定の割合で永久に増えていくキャッシュフロー。
CF1 = 1年目の受取額
r = 割引率(年利)
g = 成長率(年率)
NPV = 現在価値 - 初期投資額
※NPVの値が正なら投資を行う。負なら投資しない。
IRRは NPV = 0 となる割引率。
当該投資機会の利回り(IRR)と 同程度のリスクを持つ投資案件の利回り(ハードルレート)を比較して評価する。
CF₀ = 初期投資額
※IRRがハードルレートよりも大きければ投資を行い、小さければ投資しない。
初期投資額は特定の期間内(カットオフ期間)に回収されるべきという考え方に基づく。
※回収期間の短さで投資を評価する。
例)1000万円投資し、毎年100万円のCFがある場合、回収期間は10年。
<ペイバック法の問題点>
必ずしも望ましい評価手法とは言えない。
投資のリスクは、予想利回りの標準偏差または分散で表される。
投資家は分散投資することでリスクを低減させることができる。
【リスク資産】・・・利回りにばらつきがある資産
リスク資産の利回りは不確実。そこで期待値を利回りとして考える。
例)確立p₁で利回りr₁となり、確立p₂で利回りr₂となり、・・・確立psで利回りrsとなる場合、
投資の期待利回りRは下記の式となる。
投資リスクを数値化するために、ファイナンス理論では、投資リスクを下記のように定義する。
【投資リスク】・・・予想される利回りの分布の標準偏差(または分散)
ポートフォリオ全体の期待利回り は、個別資産の期待利回りの加重平均で求める。
R₁、R₂・・・Rn ⇒個別の期待利回り
w₁、w₂・・・wn ⇒それぞれのウェート
Rp ⇒ ポートフォリオ全体の期待利回り
ポートフォリオ全体のリスク は、個別資産間の相関係数を用いる。
例)2つの資産のポートフォリオの場合
σp ⇒ ポートフォリオ全体のリスク
ρ₁₂ ⇒ 資産₁、資産₂間の相関係数
σ₁、σ₂ ⇒個別試算のリスク(標準偏差)
w₁、w₂ ⇒それぞれのウェート
相関係数が小さくなるほど、ポートフォリオ全体のリスクも小さくなる。
2種類のリスク
【アンシステマティックリスク】:
資産の種類を増やすことで低減できるリスク。
個別資産に固有の原因で発生するリスク。
【システマティックリスク】:
資産の種類を増やしても除去できないリスク。
景気などすべての資産に影響を与える原因で発生するリスク。
あらゆる投資機会の中で、同等リスク内最大利回りのみを集めた一群のポートフォリオのこと。
※Present Valueさんより
【無リスク資産】:国債のようなリスクのない資産。
【市場資本線】 :無リスク資産から効率的フロンティア上の接点へ引いた直線。
資本市場線は、無リスク資産が存在するときの拡張された効率的フロンティア。
【マーケットポートフォリオ】:効率的フロンティアと市場資本線の接点。
※マーケットポートフォリオに近似するものとして、日本ではTOPIX、アメリカではS&P500が用いられる。
CAPM(Capital Asset Pricing Model):とは
リスクと期待利回りの関係を定量化するモデル。
個別銘柄の期待利回りを計算するときに広く実務で使われている。
CAPMの意味:
<企業目線> 資金調達のコストを測る指標 = 株主還元をどのくらいにするか
<投資家目線> 投資家が企業に投資をするとき、「最低限必要な株主還元」のこと。
CAPM = リスクフリーレート + β × マーケットリスクプレミアム
目安4~6% 10年物国債 0.05% 1 TOPIX
【β(ベータ)】:個別資産のリスク。マーケットポートフォリオのβは1と規定されている。
βが高い株式ほどハイリスク・ハイリターン。
βは, Bloomberg などの情報ベンダーが提供している。共分散で計算できる。
βはマーケットポートフォリオ(TOPIX)に対する感応度(どのような影響を受けるか)と言える。
消費財メーカーなど景気の変動を受けにくい企業の株式ベータは低い傾向にある。
金融業やハイテク企業など景気変動の影響を受けやすい企業のベータは高くなる。
CAPM と ROE はセットで使う。
CAPM < ROE でなければ投資家にとって意味がない。
※ONTRACKさんより
企業の資金調達は、負債と株主資本がある。
【負 債(Debt) 】 :借入、買掛、支払手形など。他人資本、外部資本などともいう。
【株主資本(Equity)】:資本金、法定準備金、剰余金(内部留保)。株主に帰属する持分。
【間接金融】:金融機関からの借入。
借入先にのみ決算書を提出すればよく、ディスクローズする必要がない。
経営介入のおそれ有。
【直接金融】:市場で株式発行、社債、コマーシャルペーパー。
優良大手企業にのみ開かれた道。外部にチェックされる。必要な資金が集まるか不明。
自社のリスクがどのように評価されているか把握できる。
<社債の種類>
【普通社債】:負債の性格
【転換社債】:社債の償還の代わりにその企業の株式を一定数受け取る権利(転換権)を付けた社債。
【ワラント債(新株予約権付社債)】:その企業の株式を一定価格で購入できる権利を付けた社債。
借入に対する利息は「借り入れコスト」
株主期待利回りは 「株主資本コスト」
いずれも企業からすると資金調達に伴うコストとなる。
企業は債権者と株主の両方を満足させなければならない。
借入、株式にかかわらず、資金を1円調達するのにいくらのコストがかかっているかを示す。
この計算によって、事業でどの程度の経常利益率を得ればよいのかがわかる。
D = 負債総額
E = 株式の時価総額(株価×発行済み株式数)
RD = 借入の利息
RE = 株主期待利回り(CAPM)
こうも表現できる。↓
ファイナンス理論では、情報に基づいて常に利益を出し続けることはできないと考える。
情報の対称性が確保された完全市場を想定している。3段階に分類している。
段階 | 名称 | 定義 | 恒常的利益が上がらない取引事例 |
第1 | ウィーク フォーム |
過去の資産価格や収益率のデータに基づいた取引ルールでは、恒常的利益は見込めない。 |
株価チャートなどのテクニカル分析に基づく取引。 |
第2 | セミストロング フォーム |
公表されているすべて情報に基づいた取引ルールでは、恒常的利益は見込めない。 |
経済誌、新聞やテレビの経済ニュースに基づく取引。 |
第3 | ストロング フォーム |
非公開情報を含むすべての情報に基づいた取引ルールでは、恒常的利益は見込めない。 |
企業のインサイダー情報やアナリストの企業ヒアリング分析結果などに基づく取引。 |
効率的市場仮説は現実的か?
概ねセミストロング フォームまでの市場の効率性は成り立っていることが証明されている。
【パッシブ運用】:効率的市場の考え方に基づき、市場平均並みの利益を得る目的の運用。
【アクティブ運用】:市場平均以上の利益を上げる目的の運用。
効率的:完全市場なので平均以上には儲からないこと。一時的な揺らぎはあっても予測不能。
非効率的:何らかの法則性があり、予測可能であること。
資金調達の手段は負債と株主資本に二分される。
企業価値を最大化するにはどのような資本構成にすればよいか。
モジリアニとミラーの理論では、「完全市場においては、資本構成は企業価値に影響を与えない」としているが、完全市場の条件は税制がないなど現実とのギャップがある。
負債に対する利息の支払いは費用として利益から控除される。
その分税金の支払いが減少してキャッシュフローが増加するため企業価値も増大する。
負債比率を高めることで企業価値をある程度まで高めることができる。
ではどこまで負債比率を上げてよいか。負債比率が高いということは安全性指標である自己資本比率が低いということでリスクが生じ、負債の調達コストは上昇し、企業価値は下がることになる。そのバランスをみて資本構成を決定する。
【リスク プレミアム】:負債比率がどのくらい上がったら調達コストがどのくらい上がるのか。
これは容易に判断できないが、近年は社債の格付けが参考になる。
負債比率と格付けには強い相関がある。一般に負債比率20%以内の企業が最上格(AAA)となり、負債比率50%を超えると投資適格最低線(BBB)より下の格付けとなることが多い。
配当政策は企業価値に影響を与える。配当が多いほど投資家のためになるとは限らない。
内部留保もまた株主のものなので、配当政策は株主価値に影響を与えない。
個人投資家、法人投資家、大株主、小口株主など誰にとっての利益を重視するかでも配当政策は変わる。
配当にかかる税金とキャピタルゲインにかかる税金は、その時々で異なる。
配当は支払われた時点で課税されるが、キャピタルゲインは売却しない限り課税されないため、含み益を持ちながら課税を先送りする効果がある。
投資家は配当政策を企業のシグナルとして受け取るため、配当政策は株価に影響を与える。
配当の減少を発表した場合、資金繰りの逼迫と受け止められると株価は下がる。
逆に画期的な新技術に新規投資をするための配当減少の場合は市場に評価されることもある。
フリーキャッシュフロー(FCF)とは、企業が事業活動で稼いだ利益のうち、自由(フリー)に使える現金(キャッシュ)がどれだけあるかを示すもの。
フリーキャッシュフローが多いほど経営状態が良好だと判断され、フリーキャッシュフローがマイナスの会社は資金調達の必要がある。単年度の評価には向かないため必ず複数年を見る。
FCF = EBIT × (1-法人税率)+ 減価償却費 - 投資 - ΔWC
FCF = 営業キャッシュフロー + 投資キャッシュフロー
【ワーキングキャピタル(運転資本)】
WC = (現金等価物を除いた)流動資産 - (有利子負債を除いた)流動負債
流動資産は主に棚卸資産と売掛金。流動負債は主に買掛金。
ΔWC(Delta Working Capital:増加運転資本)
前年度から増加した運転資本
EBIT(Earning Before Interest and Tax:支払金利前税引前利益)
営業利益に金利以外の営業会損益を加えた額。
フリーキャッシュフローを利用するモデルと 配当を利用するモデルがある。
WACCを割引率としたDCFの総和から、純有利子負債を差し引き、発行済株式数で割る。
S = 理論株価
N = 発行済株式数
純有利子負債 = 有利子負債から現金等価物を差し引いたもの
株主にとっての株式の価値は、将来にわたって受け取る配当の総和に等しいと考える。
株主資本コスト(CAPMか配当割引モデル)を割引率とする。
配当は負債提供者に支払を済ませた後に発生するものなので、負債を差し引く必要はない。
資本コストを差し引いた本当に儲かった金額。
近年注目されている経営指標。背景として株主価値重視、キャッシュフロー重視の流れがある。
経営の目的は企業価値の最大化。しかし損益計算書には、投資家の一方である債権者に支払うコスト(支払利息)しかなく、もう一方の投資家である株主に支払うコストが反映されていない。そこでEVAが考案された。
EVAは、当期利益(当期純利益)から資本コストを引いて求められる。
株主が投下した資本に求められる期待収益率をコストとして扱っているのが特徴。
事業の収益率が、資本を預けている株主の要求する収益率を上回らなければ、EVAの数値はプラスにはならない。
EVAから求めた企業価値とNPV法で求めた企業価値は一致するが、NPVやFCFは、単年度での投資評価はできないのに対して、EVAは投資額を投下資本コストとして複数年で計上するため、単年度での評価を可能にした指標である。
EVA = NOPAT - WACC ×(有利子負債+株主資本)
税引後営業利益 資本コスト率 債権者のもの 株主のもの
<EVAを上げる方法>